基礎知識
H5N1型 新型インフルエンザの概要
● H5N1型 新型インフルエンザとは
動物、特に鳥類にのみ感染していた鳥インフルエンザウイルスが、当初は偶発的にヒトに感染していたものが、遺伝子の変異によって、ヒトの体内で増えることができるように変化し、さらにヒトからヒトへと効率よく感染するようになったものです。このウイルスがヒトに感染して起こる疾患が新型インフルエンザ(H5N1型)です。感染流行の波があり、一つの波が2ヶ月程度続くと考えられています。
● H5N1型 新型インフルエンザの脅威
鳥インフルエンザウイルスにも様々な種類がありますが、今後、新型インフルエンザに変異しそうなウイルスとして取り上げられているのは、鳥インフルエンザH5N1型(強毒性)と呼ばれるものです。この未知のウイルスに対してヒトは基本的に免疫を持っていないため、感染が広がれば甚大な被害は免れないと危惧されています。
● H5N1新型インフルエンザの被害想定
厚生労働省の試算では、日本では国民の約25%が罹患し、医療機関を受診する患者数は最大で2,500万人。入院患者は最大200万人、死亡者数は最大64万人になると想定しています。(ちなみに首都直下型地震の死者は最大2万3千人)
ただし、現在の国の想定が、弱毒性のウイルスであること、今後の新型インフルエンザ(H5N1型)が全身感染を引き起こす強毒性であることが強く想定されることを考え合わせると被害はもっと大きなものになると考えられています。
オーストラリアの権威あるロウイー研究所では、スペインインフルエンザ程度で日本国内での死亡者数は210万人との試算を出しています。
新型インフルエンザの歴史
過去に発生した新型のインフルエンザ(スペイン風邪(約8千万人死亡)、アジア風邪(約200万人死亡)、香港風邪(約100万人死亡)、2009年発生のブタ由来の新型インフルエンザ)は全て弱毒性です。
弱毒性の場合は呼吸器や腸管などの局所感染ですが、強毒性の場合はウイルスが血液に乗って全身にまわり、さまざまな臓器で感染を繰り返し、全身感染を引き起こします。
実際、東南アジアを中心にH5N1型鳥インフルエンザに感染した患者は、38℃以上の発熱、下痢、鼻血、歯肉出血、血痰、呼吸困難など激烈な症状を起こし、約59%の致死率で死亡しています。
現在の状況
現在、H5N1型は鳥からヒトへの感染は確認されていますが、ヒトからヒトへと効率よく連続する感染伝播はみられない状況です。ヒトからヒトへの感染報告もすでにありますが、まだ鳥インフルエンザにとどまっています。
新型インフルエンザウイルスの確認をフェーズ4、世界的大流行をフェーズ6とするWHOのフェーズでは、発生前のフェーズ3(鳥インフルエンザH5N1の状況)の段階です。しかし、フェーズ4に極めて近い状態であり、新型インフルエンザの発生が近づいていると指摘する専門家も多くいます。
● ガイドライン
新たなガイドラインでは、国の行動計画において、新型インフルエンザが発生する前から国内発生、パンデミックを迎え、小康期に至るまでを5つの段階に分類して、それぞれの段階に応じた対策等を定めています。
第一段階(海外発生期)から第三段階(感染拡大期、まん延期、回復期)への進行は一気に進むと言われています。なぜなら、新型インフルエンザ(H5型等)は基本的に誰も免疫をもっていない新しいウイルスであり、通常のインフルエンザと違い、ウイルスにさらされればほとんどの人が感染することになるからです。そのためウイルスに暴露されないようにする、感染しないための努力が非常に大切になります。ガイドラインでは、「新型インフルエンザ発生時に重要業務の継続を実現するため、その継続に不可欠な要素・資源を洗い出しあらかじめ確保するための方策を講ずる。」とあります。
発生時には感染対策の保護具などは品薄状態となると推測されますので事前の対策・準備をおすすめいたします。
【改定前】 フェーズ分類 |
【現行】 発生段階 |
状 態 | 感染速度 | 感染拡大の状況 |
フェーズ1,2A,2B,3A,3B | 【前段階】 未発生期 |
新型インフルエンザが発生していない状態 | – | – |
フェーズ4A,5A,6A | 【第一段階】 海外発生期 |
海外で新型インフルエンザが発生した状態 | 0 | 国内未発生(海外発生) |
フェーズ4B | 【第二段階】 国内発生早期 |
国内で新型インフルエンザが発生した状態 | 2週間後〜4週間 | 国内で新型インフルエンザが発生、感染集団は小さく限られる |
フェーズ5B,6B | 【第三段階】 国内発生早期 |
国内で、患者の接触歴が疫学調査で追えなくなった事例が生じた状態 | – | – |
【第三段階】 感染拡大期 |
各都道府県において、入院措置等による感染拡大防止効果が期待される状態 | 4週間後〜 | 国内で新型インフルエンザの大規模集団発生が見られる | |
【第三段階】 まん延期 |
各都道府県において、入院措置等による感染拡大防止効果が十分に得られなくなった状態 | 6週間後〜 | ・国内で急速に感染が拡大 ・国内侵入から6〜7週目に感染が ピーク、8週目以降から減少傾向 ・地域毎にピーク時期は異なる、地域 毎の流行期間は6〜8週間程度 |
|
【第三段階】 回復期 |
各都道府県において、ピークを越えたと判断できる状態 | |||
後パンデミック期 | 【第四段階】 小康期 |
患者の発生が減少し、低い水準でとどまっている状態 | 17週間後〜 | – |
新型インフルエンザ等及び鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議(平成25年6月26日)